@article{oai:nagano.repo.nii.ac.jp:00000499, author = {井原, 久光}, issue = {3}, journal = {長野大学紀要, BULLETIN OF NAGANO UNIVERSITY}, month = {Dec}, note = {application/pdf, 本稿は、経営学の分野で多様に自由に、しかもかなり誤って使われてしまっているパラダイム概念を、もう一度、原義に戻って確認する作業である。パラダイム概念の曖昧さは、クーン(1962)の「I.循環的定義」と「II.多義性」に起因する。クーンは、「定義(1)=通常科学との関連」と「定義(2)=科学者集団との関連」において「I.循環的定義」を使用している。また、これら定義(1)と定義(2)は、それぞれ「争点(1)=漸進・連続的史観VS革新・不連続的史観」および「争点(2)=内的科学史観VS外的科学史観」という論争と関連づけられる。争点(1)は、科学が連続的か不連続かという問題だが、科学の「時間的共同性」という観点に立てば連続的であるが、「同時代的(空間的)共同性」という観点に立てば不連続的である。争点(2)は、科学が外部の影響を受けるかどうかという問題だが、クーンの立場は、このどちらにも組みしない「内的かつ外的な科学史」にある。このような二つの争点における中間的な見方は「第三の立場=客観的かつ相対的な立場」を支持するもので、「科学(科学者集団)の特異性」を模索することでもある。そこに、パラダイム概念のユニークさがあり、「I.循環的定義」と「II.多義性」を結ぶ鍵がある。「II.多義性」については、(1)クーン(1969)の「専門母体」概念と、(2)エックバーグ&ヒル(1984)の解釈を検討した。「専門母体」は(イ)記号的一般化、(ロ)形而上的信念、(ハ)価値、(ニ)見本例を含む概念である。エックバーグ&ヒル(1984)はマスターマン(1970)の分類に基づいて(a)形而上的パラダイム、(b)社会学的パラダイム、(c)構成的パラダイムの3つのパラダイム概念を紹介している。本稿では、この「専門母体(イ・ロ・ハ・ニ)」と「3つの概念(a・b・c)」の関連を吟味し、「3つの概念」の相互関係を図式化して、「通常科学の累積的特徴」と「科学革命=パラダイム・チェンジ」のメカニズムを説明した。科学は、主観と客観、経験と合理、帰納と演繹など、さまざまな知的対立を内包しているが、知の働きは、このような分離法や対立概念では捉えることはできない。その意味で、パラダイム概念は、精神と物質を分け、個/外界、自己/他者、人間/自然、主体/客体を対峙させる西洋思想への挑戦と言える。同様に、パラダイムの見本例(暗黙知)的側面は心/肉体、思考/行動、理論/実践を区分して捉える世界観への修正とも言える。パラダイム概念は、科学革命(パラダイム・チェンジ)によって科学者の思考前提が覆る可能性を示唆しているため、主観(相対)主義者は、科学にも客観性はなく、あるのは相対的に異なる見方だと捉える。しかし、クーンは、パラダイム概念を提示することで、完全な主観主義や相対主義に陥ることを防いでいる。相対的に変化するパラダイム概念の客観性は、科学者集団による「間主観的な検証」によって保証されており、暗黙知と形式知の相互作用を含む「間知力的な検証」によって二重に保証されている。本稿における「I.循環的定義」から導かれた議論は、「科学の共同性」であり、パラダイムの「間主観的側面」と結びついていた。「II.多義性」から導かれた議論は、科学のもつ「暗黙知の重要性」であり、それは「間知力的側面」と結びついていた。「I.循環的定義」と「II.多義性」は、パラダイム概念の両側面であるが、パラダイムの「間主観的側面」と「間知力的側面」は相互補完的にパラダイムの客観性を保証しながら、パラダイム・チェンジの可能性を生み出している。}, pages = {1--29}, title = {パラダイム概念の間主観的側面と間知力的側面 : その定義に関する再考}, volume = {18}, year = {1996} }